電気自動車(EV)の車載Libのリユース、リサイクル市場の拡大により、コバルト、ニッケル、リチウムの回収が急務!

矢野経済研究所の発表によると、2021年の車載リチウムイオン電池(以下LiBという)のリユース及びリサイクル廃棄重量は約10万トンで、国別では中国が94%。中国が多いのは、政府主導でのEV(電気自動車)普及策により販売台数が多いことも要因とのことです。2021年のリユース市場規模は約1800MWh。

中国では、リユースされたLiBの主な需要先は低価格・低速のEVとエネルギー貯蔵装置(ESS)。 LiBの中にあるレアメタルのCO(コバルト)やNI(ニッケル)、Li(リチウム)の回収量の合計は約4.7万トン。COとNIは一定規模でのリサイクルができているが、Liはまだ研究段階にあり、車載用LiBのリサイクル量は想定よりも下回っている。その理由としては、中国内で国の認定を受けたホワイトリスト企業以外にも廃棄されたLiBが流入していることや、日本ではEV/PHEVが中古車として輸出されていることが、回収量の低下につながっているという。こうした状況から、LiBのリユースおよびリサイクル市場の拡大に向けては、回収関連の課題を克服することが必要なほか、リサイクル技術の動向についても注視しておく必要があるとの見解を示しました。  

矢野研究所の報告書によると、近年、カーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)の観点から、EVやPHEVを推進する動きが加速、LiBにはCO、NI、Liといった資源リスクが高い材料が使われていることもあり、LiBのリユースやリサイクルに対する関心は高まっているとしています。

今後、EV化が進むにつれて大幅な需要増が見込まれている上記3つのレアメタルの採掘場所、価格帯、世界・日本での輸出入・使用状況、リサイクルの現況などについて、以下に記します。


《参考》
●経済安全保障の観点で見たバブル期~現在までの貿易額推移と米国と中国依存率について
https://me-grande.com/archives/2935
●日本の輸入依存率(エネルギー等、衣、食、住)とサプライチェーンの確立について
https://me-grande.com/archives/2491

①コバルト

自動車電動化に欠かせないLIB正極材や特殊鋼(スーパーアロイ)に使用 コバルトは強磁性体、白色の金属で鉄より酸化されにくく、酸やアルカリにも強 い。コバルトは国内では携帯電話、ノートパソコン、電気自動車(以下 EV)等に使用 されるリチウムイオン電池(以下、LIB)正極材の用途が最も多い。そのほかの用途 は、超硬合金のバインダー、高速度鋼や耐熱鋼等の特殊鋼添加剤、HDD等の磁性 材、家庭電化製品・音響機器等に使用されるアルニコ磁石(Al-Ni-Co)やサマリウ ム・コバルト磁石等の永久磁石、石油精製時の脱硫触媒等である。また耐熱性に 優れることから欧米等においては約半数がジェットエンジン用の超合金向けとなっ ている。
【特性】
・強磁性 ・酸、アルカリに強 い ・腐食に強い

 

 ②ニッケル

クロムなどとの合金によるステンレス鋼や耐熱鋼等が最大の用途 で、硬貨から電子産業まで幅広い活躍 Ni の用途の約 70%はステンレス鋼で原料として主にフェロニッケル (FeNi)が用いられる。Ni 地金は特殊鋼(LNG タンク、自動車、船舶、機械向 け構造用合金鋼)、ガスタービン用Ni基耐熱合金、メッキ、磁性材料(アルニ コ磁石)等で利用される。硫酸 Ni 等の Ni 化合物が磁性材料、電池材料(Ni 水素電池、リチウムイオン電池(以下 LIB)の正極材)、触媒材料として使用 されている。「洋白・洋銀」(銅・Ni・亜鉛合金)は食器、貨幣などに古くから使 用されてきた。めっきは 19 世紀に実用化された。その後、合金の開発が進 みステンレス産業の発展に伴い需要が増大している。
【特性】
・導電性、熱伝導性が高い ・展性・延性が高く加工性に 優れる ・耐食性と耐熱性に優れる

 

③リチウム

軽くて大容量の電池として活躍 金属中最も軽く、イオン化傾向が大きいというエネルギー密度を活 かし、リチウムイオン電池(以下 LIB)は自動車のバッテリーやノートパ ソコンなどのモバイル用電源として欠かせない存在であり、電気自動 車(EV)の販売増を背景に需要が拡大している。大気中で容易に酸化 されるため、主に軽量合金として利用されてきたが、リチウム金属及び その化合物の用途は、電池以外でも耐熱ガラスなどのガラス用添加 剤、冷凍機の吸収剤などでも需要が増大し、また、アルミ・リチウム合 金は航空機の構造材としても使用されている。
【特性】
・金属中で最も軽い ・大気中で酸化されやすい ・ナトリウムに次いでやわら かいが、延性は乏しい ・ガラスや金属、コンクリート などに添加すると、物性を 著しく改善する

 

 

 

出典:JOGMEC、矢野経済研究所のレポート

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