日本の貿易
日本では、エネルギー・資源・食料の安定確保やウクライナ情勢、中国や台湾との関係などの政治不安に加え、将来に向けた成長戦略、脱酸素、DX化などを進めていくにあたって、サンプライチェーンの確保によってリスクを減らす為に2022年5月に「経済安全保障推進法」が成立し、動きはじめています。本コラムでは、経済安全保証を俯瞰的にみて、エネルギー、資源、食料、脱炭素、経済活動全般に係わる日本の現況についてシリーズで纏めていきたいと思います。
日本は、輸入額全体約 100兆円(2021年)に占める中国との取引がダントツの1位で約24% (約24兆円)を占め、2位は米国で約11%(約11兆円)。 輸出額も総額98兆円のうち、中国が約22%(約21兆円)、2位は米国で約18%(約18兆円)。
日本は、経済活動において、特に中国との結び付きが非常に強いことが判ります。
インバウンド需要及び円安メリット
アフターコロナ及び円安により、TV等で、インバウンド需要の期待の報道がなされています。コロナ前(2018年、2019年)の訪日外国人の内訳をみると約85%が「アジア」であり、中国が約30%となっています。昨今、台湾情勢が話題となっていますが、中国と台湾を合わせて約45%と突出して大きな割合を占めています。
コロナ前の基準で積算すると、外国人旅行者の平均支出額は、1人当り約15万円、約3千万人とするとインバウンド費用は約4.5兆円。 その内、アジアが約3.8兆円(85%)、中国と台湾で約2兆円(45%)となります。
また支出内訳は、欧米人は宿泊代に約50%、買い物に約10%、一方、アジア人は宿泊代に約25%、買い物に約50%を費やしています。
訪日外国人の約85%をアジアが占める中、中国のロックダウン政策、台湾、香港等の緊張状態などが継続中で、インバウンド需要回復まで、相当な時間がかかりそうです。特に、中国はコロナ患者が出た場合、数千万人に及ぶ都市封鎖に追い込まれている様な状況をみると、団体行動やコロナが流行している地域に旅行や仕事など、積極的に海外に出かけることは考えにくいです。他国のお土産や商品を持ち帰り、万が一コロナに感染してしまった場合は、DXやSNSが発達している国だけに想像もつかないほど‥ですね。
また、インフレ・円安が加速している地域から来日し、宿泊場所に費用を惜しまない欧米人に合わせて、宿泊代を上げると、日本人に敬遠されてしまい、ホテル側もドルベースにして価格を上げる訳にはいかないのかと思います。
原油などエネルギー価格の値上りにより、飛行機などの移動手段の高騰や現在、米国で起っている様な、乗務員や整備員不足による交通手段、インフラ機関の減便、宿泊場所や飲食店も人手不足、営業時間短縮により、外国人客急増の受け入れ体制を直ぐに整えることが出来ないことは問題視されています。
更に、85%を占めるアジア人が、訪日で約50%を占めていた買い物についても、アジア諸国でのECビジネス拡大により、日本でなくても手に入るモノが増え、また、日本メーカや店舗でも転売防止のために1人又は1グループに対して販売個数を制限するケースも増えてきています。
メーカも輸入原材料費の値上げ等により、量産効果のメリットが薄れ、コロナ前の様に”作ったら売れる”といった状況ではないので、作りすぎた場合の在庫リスクを考えるとインバウンド向けに多くのモノをつくるのは非常に難しいと思われます。
また、自国の過度なインフレや景気の先行き不透明感がある中で、航空運賃の値上げや燃料サーチャージ、飛行機便数減などで、円安の恩恵がある欧米人の訪日は限られ、コロナ前の様に中国を中心とした買い物目的の多くの観光客を呼び込むといったインバウンド需要に期待をかけるのは、暫くの間は難しいのかもしれませんね。
いずれにしても、諸々の状況を考慮すると、今後、コロナ収束に加え、ウクライナ情勢や台湾を巡る問題解決されたとしても、以前のようなインバウンドによる需要増や円安の恩恵を期待するのは、相応な時間とサービスとインフラ再構築が必要なのでしょう。
出典:日本政府環境局/JNTO、世界経済のネタ帳、資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」
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