建物環境に関して、2つの法律によって定められています
1.事務所衛生基準規則:労働安全衛生法に基づき定められた事務所の衛生基準を定めた厚生労働省令
2.建築物における衛生的環境の確保に関する法律:通称「ビル管理法(東京都ではビル衛生管理法)」
事務所衛生基準規則では、事務室の環境管理基準として二酸化炭素の含有率を(5,000ppm以下)と定めていますが、空気調和設備により調整が可能な場合には(1,000ppm以下)になるように調整しなければならないとしています。また、床面積が3,000m2以上の特定用途に利用される建築物や8,000m2以上の学校が対象になる「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」、通称「ビル管理法(東京都ではビル衛生管理法)」では、建築物環境衛生管理基準に従って建築物の維持管理をしなければならないとされています。建築物衛生法に規定される「建築物環境衛生管理基準」について、二酸化炭素の含有率は(1,000ppm以下)と定められており、厚生労働省はこの基準に適合するように空調設備の維持管理に努めなければならないとしています。埃やススが溜まると空気の出入りが悪くなり、換気の妨げになるうえ、カビやダニの温床となることもあります。そのためアレルギーを引き起こす可能性もありえます。二酸化炭素濃度が高いということは、換気をしていないということです。二酸化炭素が直接の原因ではないものの、そのような換気をしていない状態が続くと、私たちの体にも影響が出ます。換気不足によって生じる弊害について、以下2点についてコメントいたします。
病気が伝染しやすい?
換気をしていない環境では、空気は動きません。空気が流れないため、ウイルスが一旦入り込んでしまうと、ウイルスが蔓延してしまいます。ウイルス感染の予防として、窓やドアを閉め切って外気が入り込むのを防ぐことは、かえって病気が伝染しやすい環境をつくることになります。ウイルスを蔓延させないためにも空気は、オフィス内に留めておかず、動かす必要があります。病気の感染を防ぐためにも、こまめに換気し空気を入れ替えましょう。
シックビルディング症候群
欧米では、1970年代後半から1980年代にかけて、オフィスビルで働く労働者などの間で、頭が重い、イライラする、疲労感が取れない、よく眠れないなど、何となく体調が悪いと訴える不定愁訴(ふていしゅうそ)を自覚する人が増加し、「シックビル症候群」として社会問題化しました。一般の住宅に比べてビルは気密性に優れており、多くのビルは空調で空気を循環させています。ビルの規模が大きくなるほど新鮮な空気の出入りが少なくなるため、空気中の二酸化炭素が増え、健康被害が生じやすくなるかもしれません。シックビル症候群が発生した原因は解明されておらず、複数の要因が関係している可能性があります。主な原因として、エネルギーの効率化を高めるために建築物の気密化が進んだこと、外気を取り入れないことで換気量が不足したことに伴う室内の空気汚染が進んだこと、だと考えられています。また、一酸化炭素、二酸化炭素のほか建築材料や塗料などから発生する ホルムアルデヒドやトルエンなどの有害化学物質も原因とされています。オフィス内の空気を入れ替えるために、意識して換気を行うようにすることが大切です。空気中の二酸化炭素が増えると眠気が起きて思考能力が低下し、さらに二酸化炭素の濃度が上がると、めまい、吐き気、頭痛といった症状が出ます。
換気して酸素を取り込むことで、頭痛や集中力の低下を防ぐ予防効果が期待できます。また、アレルギーを引き起こすカビやダニ、埃の除去にも効果や新鮮な空気を取り込むことで、気持ちもリフレッシュすることもできると思います。一般的に、人によって快適さが違う温度や湿度などとは違い、CO2濃度はどんな人にも一定の影響を与えると言われています。
(1)空気調和設備を設けている場合の空気環境の基準
建築物衛生法において、空気調和設備とは、「エア・フィルター、電気集じん等を用いて外から取り入れた空気等を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給(排出を含む。)ことができる機器及び附属設備の総体」をいいます。すなわち、浄化、温度、湿度、流量の調節の4つの機能を備えた設備のことです。空気調和設備を設けている場合は、居室において、下表の基準におおむね適合するように、厚生労働大臣が定める「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」に従い、空気調和設備の維持管理に努めなくてはなりません。
(2)機械換気設備を設けている場合の空気環境の基準
建築物衛生法において、機械換気設備とは、「外から取り入れた空気等を浄化し、その流量を調節して供給することができる設備」をいいます。すなわち、空気調和設備のもつ機能のうち、温度調節及び湿度調節の機能を欠く設備のことです。機械換気設備を設けている場合は、居室において、下表の基準におおむね適合するように、厚生労働大臣が定める「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」に従い、機械換気設備の維持管理に努めなくてはなりません。 「居室」とは、建築基準法第2条第4号の定義と同義であり、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために使用する室をいいます。
(3)空気環境の測定方法
特定建築物の通常の使用時間中に、各階ごとに、居室の中央部の床上75cm以上150cm以下の位置において、次の表に掲げる測定器を用いて行います。なお、イ~カの測定器についてはこれと同程度以上の性能を有する測定器を用いて測定することを可としております。二酸化炭素の含有率※1 検知管方式による二酸化炭素検定器 2ヶ月以内ごとに1回 ※1 二酸化炭素の含有率は、1日の使用時間中の平均値をもって基準と比較することとされています。
特定建築物維持管理権原者(特定建築物の所有者、占有者その他の者で当該特定建築物の維持管理について権原を有する者)は、建築物衛生法に規定される「建築物環境衛生管理基準」に従って当該特定建築物の維持管理をしなければなりません。この「建築物環境衛生管理基準」は、「空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ、昆虫等の防除その他環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置について定める」と規定されており、高い水準の快適な環境の実現を目的とした基準です。したがって、建築物環境衛生管理基準に適合していないという理由だけでは、直ちに行政措置や罰則の対象となるわけではありませんが、建築物環境衛生管理基準について違反があり、かつ、その特定建築物内の人の健康を損なうおそれが具体的に予見されるような事態が生じた場合には、都道府県知事は改善命令等を出すことができます。また、事態が緊急性を要する場合については、都道府県知事は、当該事態がなくなるまでの間、関係設備等の使用停止や使用制限を課することができます。特定建築物以外の建築物であっても、多数の者が使用、利用するものについては、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理をするように努めなければならない(法第4条第3項)こととされており、いわゆる努力義務が課せられています。