日本経済に大打撃!!トランプ関税! 米国の貿易赤字による貿易戦争!「対米国輸出入品の推移」「日本の地域別/品目別輸出入額」「為替(円安)の影響」「食料需給率の推移 」「鉱物資源の役割」資源安定供給の国際協調と迫られる日本の対応について

米国のドナルド・トランプ大統領が2025年1月20日に米国大統領に就任し、アメリカ第一主義を掲げ「アメリカ内の製造業の復活」「貿易赤字解消」「不法移民対策」「合成麻薬フェンタニルの流入阻止」などを目的として、いかなる貿易相手国にも関税をかけることを宣言・実行しています。2025年2月1日には、メキシコとカナダからの輸入品に25%、中国には10%の追加関税を課す大統領令に署名しましたが、メキシコ・カナダへの追加関税は1ヶ月延期。中国への追加関税は予定通り2月4日に発動。中国側は対抗措置として2月10日から米国からの一部輸入品に10~15%の追加関税を課すなど「関税の応酬による貿易戦争」が激しくなっています。

トランプ大統領は、かねてより米国の貿易赤字を非常に問題視しており、貿易不均衡是正には関税率引上げが効果的で、自らを「タリフ(関税)マン」と称し各国に関税を交渉道具として、圧力をかけディール(取引)を優位に進めていこうとしています。

米商務省が2025年2月5日に発表した貿易統計によると、2024年の米国貿易赤字額は▲9,184億ドル(▲140.5兆円 153円/㌦換算)。その内、対日本の貿易赤字額は世界8位の▲685億ドル(▲約10.5兆円)で全体の7.5%。トランプ大統領は、日本時間2月8日に行われた石破茂首相との初の日米首脳会議でも、会談の冒頭「貿易赤字」に言及し「平等」にしたいと発言。実現しなければ「自動車なども含め、いつも関税をかける選択肢がある」と述べており、今後、議論が活発化されると想定されます。

■米国の貿易赤字額(2024年)

対米輸出品目で大きな割合を占めるのは、
・輸入:医薬品、食料品、燃料など、
・輸出:自動車関連が全体の40%、半導体製造装置、機械装置などの工業製品など
2023年を例に、貿易赤字を解消をショミレーションしてみると 輸入額 11.5兆円 に対し、輸出額 20.3兆円、赤字額は ▲8.8兆円。輸入品目からみると、直ぐに輸入額を増やすのは難しいことから(医薬品のコロナ用インフルエンザが不要になった事もある)赤字解消のためには、輸出額 を20.3兆円→11.5兆円(▲8.8兆円 、▲43%減)にする必要があります

輸入が増えず、輸出数量が一定の場合は、売価を今の価格から▲約40%下げることで対応せざるを得ません。2021年以降円安が進み、2020年の為替が106.8円/㌦、2023年は 140.5円/㌦と、為替UP分が+約30%である事を考慮すると、2020年当時の価格で販売すれば、輸出額は減り貿易赤字は解消の方向に向かいます。

2024年の貿易赤字は▲10.5兆円と2023年の▲8.8兆円より、+1.7兆円(+約20%)と更に赤字が拡大。為替が2024年 151.4円/㌦、 2023年 140.5円/㌦ +約8%と「円安分の値下げ+輸入増」などが貿易赤字解消のポイントになるかもしれません。(2025年は更に円安進行156.4円/㌦(暫定))
アメリカ&トランプ大統領が要求する「貿易赤字解消」を達成するためには、2020年の為替水準(106.8円/㌦)の売価でも輸出で利益がだせる工夫が必要なのかと思われます。

■日本の貿易収支(2024年 速報値)

財務省貿易統計が発表している2024年の日本の貿易収支によると、輸出額107.1兆円に対し輸入額112.4兆円 貿易赤字▲5.3兆円。日本からみて米国の貿易収支が+8.6兆円と大幅黒字で、赤字が中国▲6.4兆円、EU▲2.2兆円です。日本は大幅黒字で、米国側からみると大幅な貿易赤字であり、トランプ大統領が日本に対し「貿易不均衡是正」及び「自動車を含めた追加関税」発言をしているのもこのためです。

●対米国主要輸入品の推移

●対米国主要輸出品の推移

●対米国貿易黒字額

ドル/円の為替レートの推移

●日本の自動車輸出上位10ヶ国

自動車、自動車部品等を合わせると日本の輸出額全体の約40%です。従って、自動車に関税がかけられると日本経済へのインパクトが非常に高くなります。

■日本の地域別輸出入額の推移
アジアが輸出&輸入ともにNo1で、2020年以降 約50%を継続。北米は輸出は約20%、輸入は約12~13%。ここ数年輸出入地域の大きな比率変動はありません。

●日本の地域別輸入額の推移


●日本の地域別輸出額の推移

●主要地域の輸入推移

●主要地域の輸出推移

品目別では、輸入は鉱物燃料の割合が17⇒25%と増加率が高く、これは円安が大きな要因です。

●日本の品目別輸入額の推移


●日本の品目別輸出額の推移

■輸出入額と為替の関係 

2020年と2023年を比較すると、輸入は1.62倍、輸出は1.48倍、為替は1.32倍。輸出は輸入ほど増えておらず円安による「国内産業」「国内消費」へのダメージが増加。2024年以降は、2023年より更に円安が進行(2024年 151.4円、2025年 156.4円(暫定))しており、輸入物価上昇による「貿易赤字拡大」と「円安による購買力低下・悪いインフレ」に繋がっていると言えます。

■日本・米国・中国の貿易相手国
「財務省 貿易統計」に公表されている最新データ(2022年)の中で、日本の最大貿易国である「米国」「中国」及び「日本」の主要貿易相手国を以下に記します。

●日本の主要貿易相手国

●米国の主要貿易相手国

●中国の主要貿易相手国

日本の主な輸入品目は、エネルギー、鉱物資源、食糧、機械類、IT機器、デジタル使用料などです。円安で輸入価格が30~40%上がっても、エネルギーや食糧など大幅に輸入数量が減らないものが多く、日常的に消耗するモノのため、結果として日本の資金が輸入相手国に流出しているだけになります。

日本の場合は、資源・原料をほぼ100%輸入に頼っているので「エネルギー・資源・デジタル・食糧等の円安による物価上昇」であり、輸出は輸入物価より増えず「円安による国民の実質所得の減少」によって賃金が上がっても商品の価格の値上りについていけず、購買力が低下する経済状態になっています。

消費者物価の購買力平価では、為替が109円(2024年)です。つまり25年2月時点の為替相場150円より▲25%円高(約110円前後)になれば、購買力平価は均衡し、海外への無駄な資金流出が縮小され、モノの買い負けや物価抑制をもたらし、光熱費、日用品、食料品などの生活必需品が安くなり、急激&過度なインフレで苦しんでいる国民生活が改善方向に進んでいくと思われます。
https://www.iima.or.jp/docs/ppp/doll_yen.pdf
* 購買力平価 109円/ドル 公益財団法人 国際通貨研究所より

■主な物質の対外依存度(2021~2023年)

■品目別海外貿易量&貿易額(2021~2023年)

■日本と米国の貿易関係(2022年)

出典:外務省「米国経済と日米経済関係(R5年11月)」

■食糧需給率と令和の米騒動
2023年には記録的な猛暑と水不足でコメの収穫量が大幅に落ち込み、コメ不足/価格上昇をもたらし「令和の米騒動」が勃発。農水省は2024年産の新米流通により、コメ不足は解消するとして静観。ところが2024年産の新米が流通し始めても価格は下がらず、逆に大幅に上昇し続け、総務省統計局によると、東京の5キロの小売価格は2024年1月約2500円、9月約3300円、2025年1月約4200円と1年間で約1.7倍に値上り。 供給が減ったのは、農水省が価格維持を目的に主食用米に代わって別の作物を生産する産地や農家に対し、補助金や交付金を支払う減反政策でギリギリの生産/供給量にしてきたのも要因のひとつと言われています。

2017年度に減反政策は廃止されましたが、実体は都道府県が数量や価格を調整、飼料米に高い補助金を出し、食料米からのシフトを奨励し、食料米の供給を減らし価格維持策を継続。一度生産シフトしたモノを元に戻すのは相当な時間が要すると言われており、食料米供給増による価格値下りが期待出来るか不透明な状況です。

■米国とロシアのレアアース政策
今後大きな発展と需要増が見込まれている「AI搭載機器」「IoT機器」などの先端産業に必要な半導体、LED、リチウムイオン電池、モーター等の生産に必要な素材である「レアメタル」「レアアース」などの重要鉱物資源は「安定調達、価格高騰抑制、偏在性」が大きな課題となっています。

米国とロシアは、レアアース生産の約8割を中国、チリ、ミャンマー、コンゴなどが占めていることから、ウクライナ国内に埋蔵されているレアアースの取扱いに関し「共同開発」を念頭に話合いをはじめています。(2025.2.25時点の報道)

※2011年当時、中国のレアアース輸出規制により価格が急騰した際、レーアースの値上り・供給難で、異部門でしたが知合いの家電系の調達担当が困り果てていたので、過去、環境・リサイクル事業に携わっていた時にお付合い合いのあった方を経由して、中国のレアアース会社を紹介したことがありました。家電・重電・機械業界では、ネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)を中心に、各社モノの取り合いで、価格高騰(それでも4~5倍程度)+調達難で大騒ぎでした。当時の為替レートは1ドル78~80円で、今は為替だけみても当時の約2倍(25年2月時点:150円換算)。 今後も鉱物資源の需要は旺盛になる事は確実で「受給ギャップ+為替」のダブルパンチにより、2011年以上の混乱に見舞われるかもしれません。

●中国への高い依存度

 

■銅のサプライチェーン

■レアアースのサプライチェーン

 

出典:「SHIPPING NOW 2021-2022」及び「 SHIPPING NOW 2023-2024」及び「SHIPPING NOW 2024-2025」、 令和3年「エネルギー白書2023」、「鉄鋼統計計要覧」2022年版、帝国書院HP統計資料、「日本のアパレル市場と輸入品概況2023」、財務省貿易統計 令和4年度版、資源エネルギー庁 ①とうもろこし(飼料)・大豆・小麦・砂糖類・果実・魚介類・肉類・米・木材については2021年度の数値(概算) ②原油・LNG・LPG・石炭は2021年度、鉄鉱石は2018年、羊毛・綿花は2014年の数値 ③衣類は2022年の輸入浸透率 ④輸入先について木材は2021年、その他は2022年のデータ、「貿易量及び貿易額」は国土交通省海事局

2024年版貿易推移について

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