2024年版 「日本の輸入依存率(エネルギー等、衣、食、住)」「品目別海上貿易量及び貿易額」「食料需給率の推移 国産材・外材別の木材需要(供給量) 」「鉱物資源の役割」及び資源安定供給のための国際協調について

2022年6月(2020~2021年)、2023年11月(2022~2023年)に続き、第3弾として最新情報(2024~2025年)の「日本の輸入依存率(エネルギー等、衣、食、住)」「品目別海外貿易」「食糧需給率・木材需要・鉱物資源政策」について、コロナ収束後にどの様な変化が見られたか以下に記します。

 日本はエネルギー資源、衣食住製品、工業製品の加工原材料の要であるレアメタル、レアアースなどほぼ全ての資源を輸入に頼っています。原油は中東諸国から9割以上、LNGはオーストラリア、マレーシアから約6割、石炭はオーストラリアから約6~7割で、ロシアからもLNGで約1割、石炭で数%輸入しています。主に製鉄所で使用する鉄鉱石の約6割、原料炭の約5割、一般炭の約7割はオーストラリアからの輸入に頼っている状況は変わりません。

また、今後大きな発展と需要増が見込まれている「AI搭載機器」「IoT機器」などの先端産業に必要な半導体、LED、リチウムイオン電池、モーター等の生産に必要な素材である「レアメタル」「レアアース」などの鉱物資源は、ほぼ100%輸入に頼っています。

 その重要鉱物の生産国は中国、チリ、ブラジル、ミャンマー、コンゴ、ロシアなどが約8割を占め偏在性が高く、政情不安定などもあることから「安定調達、価格高騰の抑制、備蓄戦略」が大きな課題となっています。
日本の産業基盤の強化の為には、国際協力推進を軸に安定したサプライチェーンの確立が今まで以上に必要になってきています。


①主な物質の対外依存度

 

②品目別海外貿易量及び貿易額
日本は海に囲まれている為、海外との貿易は主に海上輸送が使われています。エネルギー資源、工業製品、衣類、住宅、ビルなどのインフラに使う原材料を輸入し、自動車、機械、電気製品など付加価値の高い製品を輸出する構造になっています。

■数  量


■金  額

輸出量は2021~2023年にかけて大幅に円安が進みましたが、工業製品の数量はほぼ増えておらず、横ばいで推移。2023年は、2021年/2022年と比較すると輸出量全体は▲5~7%減少、輸入量全体は▲約6~11%減少しています。

輸出金額は、2023年の工業製品は2021年比+30%、2022年比+12%、輸出金額全体で2021年比+25%、2022年比+6%であり、数量が横ばいでも円安等による為替効果により大幅に増え、特に工業製品(機械、自動車、電気)に大きな効果をもたらしていると言えます。

一方、輸入金額は化石燃料が2021年比+57%、2022年比▲20%減、輸入金額全体では2021年比+42%、2022年比▲8%となり化石燃料の単価が大きく下がっていますが、円安によりメリットが打ち消され、多くの品目が為替の影響によって輸入価格が上昇しインフレの原因となっています。

輸出数量は増えていない理由は様々あると思いますが、要因の一つとして「円高/海外の人件費安/エネルギーコスト安」の際に、従来の「国内生産→輸出依存型」から「海外現地生産→現地販売」にシフトしたためです。

日本は、今後、CO2排出、高齢化、人材不足、エネルギー難、天候不順、資源や素材の海外依存度大、不安定な為替など多くの問題を抱えており、産業の国内回帰といいながらも、現実的には、海外での現地調達・現地雇用・現地生産を考慮していかなければならないと思われます。

 

 

■家電などの電子機器類

電子機器の国内生産の比率は2020年11%、2021年12%、2022年12%※1約9割を輸入に依存しており、日常生活に欠かせない家電製品の7割以上が中国からの輸入品です。特に、エアコン、洗濯機などは、ほぼ100%に近い状態です。(中国からの輸入割合(2022年) エアコン96%、洗濯機85%、冷蔵庫69%など※2
※1 電子情報技術産業協会「電子情報産業の世界生産見通し」より  ※2 財務省「貿易統計」より

③食糧需給率の推移


 

 

米は食料受給率が高いですが、それ以外は約50年間減少傾向または横ばいです。飼料や原材料に使う小麦や大豆などの自給率が極端に低くなっています。中国の食糧自給率は2000年時点で約97%とほぼ自国で完結できていましたが、2022年には約66%と自給率が低下しており「食糧安全保障」の一環として食糧自給率UPを目指しています。

一方、日本の食料自給率は米などの主食用穀物を除き、1960年頃から減少傾向でしたが、2000年に約40%、2022年でも約37%(農林水産省より)と近年は横ばい傾向がが続いています。

円安の進行、国際競争力の低下、発展途上国の経済発展などで「食糧調達の買い負け」「気候変動による不作」「世界人口の増加(2000年:60億人、2020年:78億人、2030年:85億人、2050年:97億人 (国連見通し))」により、現在重点的に議論されている半導体やエネルギー資源・鉱物資源などの安定確保 ”経済安全保障”に加え、”食糧安全保障”についても早急な対策が必要になると思われます。

●10年で150兆円!「GX経済移行債、電力不足対策」「米国/中国の貿易取引のバブル期~現在までの推移」 https://me-grande.com/archives/2935

④国産材・外材別の木材需要・供給量(丸太換算)

 木材需給率は、約60年前の1965年には70%を超えていましたが、1975~1985年に半分の約35%に減少し、2000年頃に20%を切る水準にまで落ち込みました。現在は木材需要の減少と共に、輸入材は横ばいになり、2020~2022年には自給率が約35%を上回る水準になっています。


⑤レアメタル・レアアース・銅

日本は、レアメタル・レアアースは、ほぼ100%を輸入に依存し、それぞれの鉱物を産出する国にかたよりがあり、政情不安のある国から輸入しているモノも多く供給上では不安定な要素も抱えいます。

 特にこれから、脱炭素化・AI化に向けて必要不可欠な素材や加工・精錬工程で使用するレアメタル・レアアースは中国の依存度が高くなっています。

※2011年当時、中国のレアアース輸出規制により価格が急騰した際、レーアースの値上り・供給難で、異部門でしたが知合いの家電系の調達担当が困り果てていたので、過去、環境・リサイクル事業に携わっていた時にお付合い合いのあった方を経由して、中国のレアアース会社を紹介したことがありました。家電・重電・機械業界では、ネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)を中心に、各社モノの取り合いで、価格高騰(それでも4~5倍程度)+調達難で大騒ぎでした。当時の為替レートは1ドル78~80円で、今は為替だけみても当時の約1.9倍(24年11月時点:150円換算)。 今後も鉱物資源の需要は旺盛になる事は確実で「受給ギャップ+為替」のダブルパンチにより、2011年以上の混乱に見舞われるかもしれません。

●中国への高い依存度

 

■銅のサプライチェーン

■レアアースのサプライチェーン

 

2022年版貿易推移について

2023年版貿易推移について

出典:「SHIPPING NOW 2021-2022」及び「 SHIPPING NOW 2023-2024」及び「SHIPPING NOW 2024-2025」、 令和3年度「食料需給表」、令和3年「木材需給表」、「エネルギー白書2023」、「鉄鋼統計計要覧」2022年版、帝国書院HP統計資料、「日本のアパレル市場と輸入品概況2023」、財務省貿易統計、「森林・林業白書」令和4年度版、資源エネルギー庁 ①とうもろこし(飼料)・大豆・小麦・砂糖類・果実・魚介類・肉類・米・木材については2021年度の数値(概算) ②原油・LNG・LPG・石炭は2021年度、鉄鉱石は2018年、羊毛・綿花は2014年の数値 ③衣類は2022年の輸入浸透率 ④輸入先について木材は2021年、その他は2022年のデータ、「貿易量及び貿易額」は国土交通省海事局

☆コラム☆
●北海道は食糧需給率UPの重要拠点?  不老長寿の果実「ハスカップ」は ”不労長寿(FIRE)” の入口か!

https://me-grande.com/archives/2032
●10年で150兆円!「GX経済移行債、電力不足対策」「米国/中国の貿易取引のバブル期~現在までの推移」
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●「石油から銅へ」  
https://me-grande.com/copper

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