ロシア産石炭の輸入を段階的に削減!北海道の石炭卸業者から聞いた ”石炭は国によって成分が大きく異なるので代替え先が見つかれば良い訳ではない!” 使う方では大きな惑いも!!

ウクライナ情勢により、日本政府はロシア産石炭の輸入を段階的に削減し、将来的に禁止する方針を示しました。石炭は電力だけでなく、鉄鋼、セメント、製紙業界などの産業分野でも多く使われています。財務省貿易統計によると令和2年の日本の石炭総輸入量は約1億8千万トンで世界第3位。その内ロシア産は発電、セメント燃料などに使う一般炭が13%、製鉄用などに使う原料炭が8%です。

JFEスチールは約18%、太平洋セメントは約6割ロシア産の石炭を使用しているとのことです。電力会社も相当量ロシアからの輸入に頼っており、他国からの代替調達が必要になります。経済産業省によると、2020年度の総発電電力量の1位が液化天然ガス(LNG)火力の39%、2位は石炭火力の31%となっており、合わせて約70%を火力発電に依存しています。

石炭を他の国から代替調達をすることで、需給アンバランスによる価格上昇懸念もありますが、2000年初頭に各種リサイクル事業を推進し、特に自動車のASR(シュレッダーダスト)のリサイクルに携わっていた際に知り合った北海道の石炭卸業者さんの話を思い出しました。

*ASRとは“Automobile Shredder Residue”の略で車を粉砕し金属類を回収した後に残る残さのこと

 
リサイクル法は、1990年代に埋立処分場不足、不法投棄、焼却する際に発生するダイオキシンなどが社会問題化し「資源、廃棄物などの分別回収、再資源化・再利用」を目的に制定されたものです。基本的には、リサイクル費用は所有者負担、回収・再資源化・再利用はメーカー責任で行われることになっています。

1997年:容器包装リサイクル法
2001年:家電リサイクル法、食品リサイクル法
2002年:建設資材リサイクル法
2005年:自動車リサイクル法
2013年:小型家電リサイクル法


当時は金属類の価格が安く、埋立処理場不足による処分費高騰、埋立廃棄物からの有害物質流出、焼却した際のダイオキシン、SOx、NOxなどがクローズアップされていた時代でした。家電や容器包装などは先行して始め、ある程度方向性が見えてきましたが、最もリサイクルが難しいと言われていた自動車のシュレッダーダストのリサイクルに関して、自動車メーカや金属スクラップ業者の方々と検証を重ね、深くお付合いしていたことがあります。自動車は既に一定のリサイクルの仕組みが確立している中、更にリサイクル率を高める為に、難処理物のリサイクルを追求したため、施行が少し遅れたのでしょうか。

現在は、リサイクル法が制定されたころと比べ、市場環境も大きく変わり、金属価格の値上り、リサイクル技術の成熟、分別意識、海外でのリユースなどの体制も整いつつあり、都市鉱山といわれているレアメタルの回収やリサイクル品目の追加見直しが必要なのかと思います。

自動車リサイクル検討時に、北海道で大手製紙メーカなどに石炭を納入している業者さんと出会いました。代表は80歳を超え大きな会社ではなかったですが、大手メーカーからの信頼は絶大で、自ら石炭をインドネシア、ロシア、オーストラリアなどに買付けに行かれていました。石炭とひとくくりに言っても、原産国によって大きく異なり、可燃分や水分によって燃焼効率が大きく違い、硫黄分や窒素分などが多ければ、SOxやNOxが問題となり、灰分は燃焼残渣、カロリーが高すぎると炉を傷めるなど様々な問題が生じることから、設備や仕様に合わせる為に、様々な国の石炭を混ぜ最適な状態に調節して納入されていました。確かに、石炭の分析値を見ると同じ一般炭でも、同じ品種なのかと思うくらい、カロリー、水分、灰分などの成分がバラバラでしたね。お客の好みに合わせてつくるブレンドコーヒーのマスターやバーテンダーみたいな感じでした。

石油会社にもアプローチし、様々な検証をして頂きましたが、普段何気なく使っているガソリンも、輸入時には重油の状態ですが、不純物除去・蒸留などの工程を経て、LPガス、ガソリン、灯油、ジェット燃料、軽油など我々が使いやすい燃料にしてくれています。

何年か前、暖冬が続いた時に、灯油の使用量が大幅に減り、石油タンクに灯油ばかりになって、重油を入れるタンクがなくて困ったなんてことも報道された時がありましたが、何か一つでもバランスが乱れると様々なところへの影響が大きく舵取りが難しいと感じたことがあります。セメント会社や製鉄所なども広大な敷地に超巨大な設備を有し、使用燃料・原料が多岐に亘り、入と出の燃料の管理が想像以上です。

ロシア産の石炭の代替えは、調達先の確保、価格交渉なども大切ですが、仕様にあった燃料の技術評価やデリバリーなどの仕組みが軌道にのる迄が大変なのかなと思います。エネルギー資源や金属資源は産業におけるライフラインであり、設備や製品にあったモノにするために相当な検証期間が必要なのでしょう。電力や産業界の方々は突然のことで非常に大変だと思いますが、是非頑張っていただきたいですね。

資源を輸入に頼らざるを得ない日本としては、余裕のあるうちに「備蓄」や「分散調達」の仕組み作りなど、不測の事態に備えた体制をつくっておくことが重要なのかなと思います。

今話題のバイオマス発電、バイオエタノール、バイオディーゼル、メタン発酵、廃棄物利用、アンモニアなどを使ったエネルギー利用は、前処理でいかに燃料を均一化できるかです。前処理や燃料調達で電力、輸送、コスト増、また、元素同士が変な結合をして環境に悪い物質ができてしまう可能性も往々にしてあります。

これらは、20年~30年前から実証・検証されてきており未だに成功事例が少ないのはそれなりの理由があるからで、コストの問題だけであればまだ良いのですが、克服すべき技術課題も多く抱えており、再度クローズアップされたからといって簡単にできるものではないですよね。

例えば、毒性が高いと言われているシアン化合物(-CN)は、化学式は、炭素(C)と窒素(N)です。東京の新市場でも土壌汚染で問題となりました。アンモニアの化学式は(NH₃)、炭素(C)とどこかのプロセスで結びつく可能性がないのか、他の触媒と結合することはないのか、など燃料以外で使用している工業製品や生成・洗浄・排気など全ヶ所で悪い物質に排出・濃縮されて出てくることがない様良く検証する必要があるのかと思います。

また、長期間の燃料の安定調達や既存のサプライチェーンに乱れを起こさないか、その事前評価が実用化に向けての大きな課題ですね。

★コラム★
銅は第二の石油へ!「銅の安定確保が脱炭素社会のカギを握る!!」
https://me-grande.com/copper
●今後、地政学的リスクを考慮して「備蓄品の対象範囲・量」を拡大する必要があるのでは! 
https://me-grande.com/archives/1656

●脱炭素化・EV化・DX化に欠かせないレアメタル(コバルト、ニッケル、リチウム)レアアース等は戦略的に「備蓄」の品目・量を増やしていくことが重要!資源枯渇以外にインフレリスクも!!
https://me-grande.com/archives/1782
●ニッケル,パラジウム,アルミの一大生産国ロシアからの供給難で脱炭素化危機!”備蓄,分散購入,継続購入,リサイクルなどの取組み急務!
https://me-grande.com/archives/1893

☆出典☆
●経済産業省 2020年エネルギー需給実績(速報)
●環境省 容器包装リサイクル法とは
http://www.env.go.jp/recycle/yoki/a_1_recycle/index.html
●経済産業省 家電リサイクル法とは
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/kaden_recycle/index.html
●農林水産省 食品リサイクル法とは
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_6.html
●環境省 建設資材リサイクル法とは
https://www.env.go.jp/recycle/build/gaiyo.html
●経済産業省 自動車リサイクル法とは
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/automobile_recycle/about/recycle/recycle.html
●環境省 小型家電リサイクル法とは
https://www.env.go.jp/recycle/recycling/raremetals/law.html

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