2022年8月13日の千葉日報によると、日本製鉄東日本製鉄所君津地区(君津市)から有害物質シアンが流出した問題で、同社東日本製鉄所は18日に千葉県庁で記者会見し『今回新たに判明した「16排水口」から検出された「シアン」と「全窒素」について、2018年2月から今年8月15日までの自主検査423回の測定で、シアンは37回、全窒素は168回の排出基準超過があったと明らかにした。同社は「重篤な事案」とし、全社体制で事実関係の検証と原因究明、再発防止に徹底して取り組むとした。』
当社の2022年4月12日付 コラム「ロシア産石炭の輸入を段階的に削減!~」の中で「シアン化合物」について触れていますが、製鉄所は排出される有害物質を予め予測でき、十分な対策を施していると思われますが、それでも基準を上回る有害物資がこれ程多く排出されるとは、驚きです。日本製鉄ほどの会社が‥
アンモニアの化学式は(NH3)、石炭の主要元素は(C)、ガスは(CH4)、今回問題となった、シアン化合物は(-CN) 、全窒素は(T-N)。
近年、CO2削減対策として、火力発電所でアンモニアの混焼実験等が行われていますが、元々、アンモニアを燃料として想定していない既存設備で、新たに使用する際には、大気汚染対策、洗浄装置、臭気対策、大気に放出した場合の拡散・土壌汚染、排出物・廃棄物処理、周辺環境・作業員の体調管理、万一漏れ出した際の周辺地域の環境・人体・生態系への影響などクリアするべき課題は非常に多くあると思います。
また設備コストとランニングコストだけでなく、燃料の取扱いなども習熟しないと、逆に大気汚染や水質汚染対策でコストが嵩み、事業として成立せず本末転倒になってしまう可能性もありますね。
バイオマスやメタン発酵、廃プラ発電など、新しい燃料を使用する場合、燃料の安定確保・価格は勿論ですが、臭気問題、スペックを満たす為に過剰設備になることによるコストUP、過剰設備になることから生まれるランニングコスト増など、当初の目論みから大幅に外れ、赤字の垂れ流しになるなど、深みにハマることは、過去の経験上往々にしてあります。
特に、環境関連設備は話題先行で、20年以上前からチャレンジしていても、道半ばのモノが多く、予期せぬ事が次から次へと起こり、イバラの道を歩まなければならないと思いますが、チャレンジしている会社さんは、挫けずに是非とも頑張って欲しいところです。
会社情報の欄で述べている様に、10円安いものを買う為にガソリン代100円を使って隣町のスーパーに買い物に行く様な事にならない様注意が必要ですね。
助成事業などでは、理念先行で、耳障りの良いことしか表に出てこない事が往々にしてありがちなので‥
しかし、今回の日本製鉄君津でわずか約4年間で、423回の測定中「シアン:37回(9%)」「全窒素:168回(40%)」も基準オーバーした汚水を排水していたとは‥。
以前、同事業所を何度か訪問させて頂き(当時は新日鉄君津)、超巨大な敷地・設備・事業所だけで1つの町が形成されているかの如くスケールの大きさと古き良き伝統に感動を覚えた事業所だっただけに、約4年前からデータとしてアラームが出ていて認識していたにも係わらず放置していたというのは、非常に残念です。
★参考コラム「ロシア産石炭の輸入を段階的に削減!~」
https://me-grande.com/archives/2137
毒性が高いと言われているシアン化合物(-CN)は、化学式は、炭素(C)と窒素(N)です。東京の新市場でも土壌汚染で問題となりました。アンモニアの化学式は(NH₃)、炭素(C)とどこかのプロセスで結びつく可能性がないのか、他の触媒と結合することはないのか、など燃料以外で使用している工業製品や生成・洗浄・排気など全ヶ所で悪い物質に排出・濃縮されて出てくることがない様良く検証する必要があるのかと思います。
★全窒素(T-N)とは
水中に含まれる全ての窒素は無機性窒素(IN) と有機性窒素(ON)に大別され、無機性窒素はアンモニア性窒素(NH4-N)、亜硝酸性窒素(NO2-N)、硝酸性窒素(NO3-N)に、有機性窒素はタンパク質、アミノ酸など。近年、工場排水や生活排水等に起因する河川、湖沼、海の富栄養化現象、プランクトンの異常発生などの水質汚染が進行し、水中の窒素が増加するのは、し尿や肥料などに多量に含まれているため、生活排水、工場排水、農業排水などの流入による場合が多い。水中の窒素などが多くなると、富栄養化の状態となり、藻類の異常繁殖により赤潮などの原因となる。