2023年最新 「日本の輸入依存率(エネルギー等、衣、食、住)」「品目別海上貿易量及び貿易額」「食料需給率の推移 国産材・外材別の木材需要(供給量) 」「2050年カーボンニュートラル社会実現 に向けた鉱物資源政策」国際協調と資源の安定供給について

2022年6月にコロナ渦(2020~2021年)の「日本の輸入依存率・貿易額(エネルギー等、衣、食、住)」及び「2050年カーボンニュートラル実現のキーファクターとなる鉱物資源政策」について、コラムで紹介しましたが、コロナ収束後に実体経済や政策にどの様な変化が見られたか纏めてみました。

日本はエネルギー資源、衣食住製品、工業製品の加工原材料の要であるレアメタル、レアアースなどほぼ全ての資源を輸入に頼っています。原油は中東諸国から9割以上、LNGはオーストラリア、マレーシアから約6割、炭はオーストラリアから約6~7割で、ロシアからもLNGで約1割、石炭で数%輸入しています。主に製鉄所で使用する鉄鉱石の約6割、原料炭の約5割、一般炭の約7割はオーストラリアからの輸入に頼っている状況です。

また、今後大きな発展と需要増が見込まれている「AI搭載機器」「IoT機器」などの先端産業に必要な半導体、LED、リチウムイオン電池、モーター等の生産に必要な素材である「レアメタル」「レアアース」などの鉱物資源は、ほぼ100%輸入に頼っています。

その重要鉱物の生産国は中国、チリ、ブラジル、ミャンマー、コンゴ、ロシアなどが約8割を占め偏在性が高く、政情不安定などもあることから「安定調達、価格高騰の抑制、備蓄戦略」が大きな課題となっています。

日本の産業基盤の強化の為には、国際協力推進を軸に安定したサプライチェーンの確立が今まで以上に必要になってきています。

①主な物質の対外依存度



②品目別海外貿易量及び貿易額
日本は海に囲まれている為、海外との貿易は主に海上輸送が使われています。エネルギー資源、工業製品、衣類、住宅、ビルなどのインフラに使う原材料を輸入し、自動車、機械、電気製品など付加価値の高い製品を輸出する構造になっています。

コロナ前の2019年より、エネルギー資源の輸入量は減りましたが、
2022年はエネルギー価格の高騰及び円安の影響により、エネルギー資源の輸入額が約2倍になっています。また飼料・食糧についても2019~2022年まで輸入量は横ばいですが、価格高騰及び円安により、輸入金額が大幅に高騰しています。

輸出は、数量はほぼ横ばいで、円安でも輸出金額は大きく増えていません。これは、日本の産業構造上、国内生産→輸出依存型から、海外で現地生産・現地販売にシフトし”円安メリットは海外で享受”といった方向に変化しているためだと思われます。

日本は、エネルギー資源や飼料・食糧など原料の海外の依存率が高く、それらの価格高騰や為替などの影響が大きく、更に、CO2排出問題、高齢化・人材確保など多くの問題があり、今後益々、海外での現地調達・現地雇用・現地生産が加速していく方向にあります。

 



③食糧需給率の推移

米は食料受給率が高いですが、それ以外は約50年間減少傾向または横ばいです。飼料や原材料に使う小麦や大豆などの自給率が極端に低くなっています。中国の食糧自給率は2000年時点で約97%とほぼ自国で完結できていましたが、2020年には約66%と自給率が低下しており「食糧安全保障」の一環として食糧自給率UPを目指しています。

一方、日本の食糧自給率は以前から非常に低く
 2000年に約40%、2020年でも約37%(農林水産省より)と自給率は非常に低い状態が続いています。

円安の進行、国際競争力の低下、発展途上国の経済発展などで
「食糧調達の買い負け」「気候変動による不作」「世界人口の増加(2000年:60億人、2020年:78億人、2030年:85億人、2050年:97億人 (国連見通し))」により、現在重点的に議論されている半導体やエネルギー資源・鉱物資源などの安定確保 ”経済安全保障”に加え、”食糧安全保障”についても早急な対策が必要になると思われます。

●10年で150兆円!「GX経済移行債、電力不足対策」「米国/中国の貿易取引のバブル期~現在までの推移」 https://me-grande.com/archives/2935

④国産材・外材別の木材需要・供給量(丸太換算)

木材需給率は、約60年前の1965年には70%を超えていましたが、1975~1985年に半分の約35%に減少し、2000年頃に20%を切る水準にまで落ち込みました。現在は
木材需要の減少と共に、輸入材は横ばいになり、自給率は30%を上回る水準になっています。

⑤レアメタル・レアアース・銅

日本は、レアメタル・レアアースは、ほぼ100%を輸入に依存し、それぞれの鉱物を産出する国にかたよりがあり、政情不安のある国から輸入しているモノも多く供給上では不安定な要素も抱えいます。

 特にこれから、脱炭素化・AI化に向けて必要不可欠な素材や加工・精錬工程で使用するレアメタル・レアアースは中国の依存度が高くなっています。

※2011年当時、中国のレアアース輸出規制により価格が急騰した際、レーアースの値上り・供給難で、異部門でしたが知合いの家電系の調達担当が困り果てていたので、過去、環境・リサイクル事業に携わっていた時にお付合い合いのあった方を経由して、中国のレアアース会社を紹介したことがありました。家電・重電・機械業界では、ネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)を中心に、各社モノの取り合いで、価格高騰(それでも4~5倍程度)+調達難で大騒ぎでした。当時の為替レートは1ドル78~80円で、今は為替だけみても当時の約1.9倍(23年11月時点:150円換算)。 今後も鉱物資源の需要は旺盛になる事は確実で「受給ギャップ+為替」のダブルパンチにより、2011年以上の混乱に見舞われるかもしれません。



 

 

 

 

 

 

●中国への高い依存度




■銅のサプライチェーン

■レアアースのサプライチェーン

出典:「SHIPPING NOW 2021-2022」及び「 SHIPPING NOW 2023-2024」、 令和3年度「食料需給表」、令和3年「木材需給表」、「エネルギー白書2023」、「鉄鋼統計計要覧」2022年版、帝国書院HP統計資料、「日本のアパレル市場と輸入品概況2023」、財務省貿易統計、「森林・林業白書」令和4年度版、資源エネルギー庁 ①とうもろこし(飼料)・大豆・小麦・砂糖類・果実・魚介類・肉類・米・木材については2021年度の数値(概算) ②原油・LNG・LPG・石炭は2021年度、鉄鉱石は2018年、羊毛・綿花は2014年の数値 ③衣類は2022年の輸入浸透率 ④輸入先について木材は2021年、その他は2022年のデータ、「貿易量及び貿易額」は国土交通省海事局
☆コラム☆
●北海道は食糧需給率UPの重要拠点?  不老長寿の果実「ハスカップ」は ”不労長寿(FIRE)” の入口か!
https://me-grande.com/archives/2032
●10年で150兆円!「GX経済移行債、電力不足対策」「米国/中国の貿易取引のバブル期~現在までの推移」
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●「石油から銅へ」  
https://me-grande.com/copper
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