ロシアからのエネルギー資源の輸入規制による影響と代替エネルギーについて!インドネシアもパーム油の禁輸!エネルギー用の油だけでなく食用の油もコスト上昇へ!食糧危機による新たな紛争も!テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」2022.4.15放送

2022年4月15日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」で、エネルギー資源の脱ロシア依存についてパネルで紹介されていましたが「1.番組で紹介された内容」及びその内容を含め「2.脱炭素に向けたエネルギー全般の考え方」について別けてコメントしたいと思います。

1.「羽鳥慎一モーニングショー 2022年4月15日」の番組内で紹介された内容

EUが輸入するロシア産化石燃料の割合は、石炭45.6%、石油25.5%、天然ガス43.9%。EUはロシアからの石炭の輸入禁止を決めたが、ロシアへのエネルギー資源の依存率が高く直ぐには対応ができない状況にある。
金額ベースでも非常に大きく、ロシア産のエネルギー資源に約1か月で350億ユーロ(4兆7千億円、1€130円換算)各国の対応は


・ドイツ:石炭・石油輸入を2022年内に停止、天然ガスは2024年半ばまでに依存度ゼロ、原発の稼働延長案は却下2035年迄にほぼ全ての電力を再生可能エネルギー
・イタリア:アルジェリアと天然ガス供給で合意

・イギリス:石炭・石油輸入を2022年内に停止、天然ガスは出来るだけ早く輸入停止、2030年迄に原発を最大8基新設
・フランス:2027年迄石油・ガス輸入ゼロを計画、原発を最大14基新設
・ベルギー:ロシア依存を減らす、2025年の脱原発宣言を一部撤回、原発7基全て閉鎖→2基を10年間稼働延長


EU全体として、再生可能エネルギーと原子力の2本立てで電力の供給力を増やすとしています。


・日本:石炭の段階的輸入禁止、その他の資源開発事業は撤退しない。再生可能エネルギー・原子力など脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用を図っていく。再生可能エネルギを優先的に送電線を利用できるよルールの見直しを行うなど普及を促進する。東京ガス社長は「ロシアからのLNGの輸入がもし止まったら(都市ガスの)供給支障を起こす。ロシア産の代替えで全部スポットで買おうとしても物理的に不可能」 経団連会長は「現時点でロシアからのエネルギー輸入を止めることは現実的な判断ではない」とコメント

ウクライナ情勢により新たなリスクとして浮き彫りになった原子力発電所が占拠又は攻撃された場合の対処方法は「状況によって自衛隊が治安出動することにより対処することも可能」との見解です。

以下は番組後に各文献を調べた内容






2.脱炭素に向けたエネルギー政策について

ロシアは、世界有数の資源国で電力などに使用する燃料でみると、天然ガスの輸出量は世界第1位、石油輸出量は世界第2位、石炭輸出量は世界3位となっています。特に欧州では、天然ガスの約4割、石油の約2.5割、石炭の約5割をロシアから輸入しているため、燃料の安定調達や値上り、将来に向けたエネルギー政策、脱炭素の取り組みにも影響が生じつつあります。

欧州の電力消費量に占める再生可能エネルギーの比率は、2020年の時点で22%、それを2030年までには60%にまで増やす計画を立てています。太陽光や風力による再生可能エネルギーは気象条件による発電ロスが大きいため、それを補完するため、石炭や石油と比較して、温室効果ガスに含まれる二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物などの排出が少ない「移行期のエネルギー」として天然ガスを位置づけ、天然ガス火力と原子力の導入を進めていました。

しかし、今回のウクライナ情勢により、ロシアからの依存度を減らすもしくは無くすことが決まると、天然ガスだけではなく、その代替として石油や石炭の需要もひっ迫し、世界的に今以上のエネルギー価格の高騰が起きることが想定されています。エネルギー資源の争奪戦となると、通貨が高い国や経済が好調な方が有利となり、先進国と途上国、競争力のある国と無い国で格差が益々広がっていくことになってしまいます。

小麦、トウモロコシ、油類の値上りによる食糧・日用品の値上り

現在、穀物類の価格高騰により、食糧不足に陥った途上国などでは紛争がおき始めています。
国連世界食糧計画(WFP)のトムソン・フィリ報道官は4月11日「ウクライナでの紛争が食料価格の上昇や世界の飢餓を引き起こすおそれがある」と表明しました。ウクライナとロシアは世界の小麦輸出の約30%、トウモロコシ輸出の15%、化学肥料の約20%、ひまわり油の約60%を占めているため、ウクライナ情勢により価格上昇を引き起こすおそれがあり、既に自国の高い食料インフレの被害を受けている数百万人の人々に影響を与えていると述べています。小麦はパンやパスタなどの食糧、トウモロコシは家畜のエサ、化学肥料は食糧やエサ、油は食用原料や日用品の価格や収穫量に大きく係わってきます。

インドネシアは4月22日「政府が後に決定する期限まで食用油とその原料の輸出を禁止する」と発表ししました。インドネシアは、パーム油の第一位の輸出国(シェア約60%)です。パーム油はアブラヤシから作られ、食用油やカップ麺、お菓子などの加工食品からシャンプーや化粧品まで、暮らしに欠かせない多くの製品に使われています。世界で食用油の価格高騰につながる恐れがあります。
禁輸は4月28日からで期間は示されておらず、インドネシア大統領は「国内で食用油が手頃な価格で豊富に入手できるよう実施状況を監督して、有効性を評価をしたい」と表明しています。

ウクライナ情勢の前から、油価格の高騰で食品の値上りが相次いでいましたが、今回、ヒマワリ油の供給が滞っていることから、代替えとして大豆油、菜種油、パーム油を使うケースが増え、油類全般に大幅に値上りし、身近な日用品の物価高騰や食糧争奪戦による新たな紛争が懸念されます

ロシアとウクライナの穀物に30%以上依存する国は約50ヶ国あり、食糧危機国55ヶ国の内小麦輸入が10%超の国が36ヶ国もあります。それら食糧危機国は家計に占める食糧の割合が約40%と言われており、食糧の価格高騰と供給不足は先進国より切実な問題となっています。
現実に、ペルーやスリランカでは、インフレ加速、食料難で反政府運動が暴徒化し、特にスリランカでは政策金利を2倍(約13~14%)に引き上げ、パキスタンでも財政赤字やひどい経済危機に見舞われ、各国政情不安が高まり各国食料確保とインフレ抑制に頭を悩ませています。

 

化学肥料の値上りによって食糧も値上り! 農家さんも悲鳴!

2022年下期から食糧価格の高騰が懸念されるのは、農作物に使う化学肥料の供給不足や値上りも大きな関係があります。日本は、中国、マレーシア、カナダ、ロシア、ベラルーシなどから化学肥料の原料を輸入して国内で生産しています。化学肥料の原材料となる尿素(N)、りん酸アンモニウム(N・P)、塩化カリウム(K)などの価格は、前年比で約30%上昇、化学肥料のコストの約65%が原材料費であり、輸入価格上昇により今後更に値上りが加速するといわれています。また農作物栽培で、6~13%を肥料代が占めており、肥料代の値上りは、農家の経営圧迫や商品価格に大きな影響を及ぼします。

肥料価格が高騰している要因は、世界的な人口の増加、食生活の変化により穀物消費量の増加、肥料の国際的な需要増、肥料製造に必要な石油・石炭・天然ガス高騰、輸出国が国内需要を優先した輸出禁止政策など様々です。(中国は国内需要が増えていることを理由に2021年10月頃から他国への輸出を中止していました)



*農林水産省「肥料をめぐる情勢」 令和4年4月


エネルギーや工業製品の原料を輸入に依存せざるを得ない日本としては、円安、輸送コスト増、コロナによるロックダウン、自国優先の禁輸、原料争奪戦など、今後更なる原材料の値上り、場合によっては原材料が手に入らずモノがつくれない状況に陥る可能性も多分にあり、生産者及び消費者にとって非常に頭の痛いところです。

食糧もエネルギーも生きていく上で最も重要なライフラインであり、各地で価格高騰や供給不足による新たな紛争が起こる可能性も高く世界的に大きな課題です。

天然ガスについて

EUでは天然ガスのおよそ半分をEU地域内で生産し、残りの半分が輸入、パイプラインで送る方法と、超低温で冷却・液化させLNGとしてタンカーやタンクローリで運ぶ方法があり、輸送コストが安いパイプライン供給が8割以上、その半分の40%がロシアからのルートです。日本企業は「サハリン1、サハリン2」のPJに係わっていますが、ロシアは天然ガスをパイプラインでEUやアジア諸国に供給しています。

ノルドストリーム2の規模は約550億立方メートルで石炭火力50基相当、原子力発電所14基の発電所の燃料相当になるとのことです。(換算値:石炭火力1基当り40億立法メートル、原発1基11億立方メートル、JOGMCによる)
・ノルドストリーム 約1400億立方メートル
・ノルドストリーム2 約550億立方メートル
・トルコストリーム  約300億立方メートル

陸続きの大陸は、パイプで直接、気体の状態で天然ガスを送ることで「LNGにするプロセスで発生する余計なエネルギー」や「輸送コストや燃料」などを大幅に削減でき、環境面でもコスト面でも大きなメリットがあり、各国積極的に導入を促進していた模様です。

米国の天然ガスの生産量は、2020年時点で世界第2位のロシアよりも多く世界第1位8割が自国内で消費され、2割が輸出。米国が天然ガスの一大生産国になったのは2000年頃に起こったシェールガス革命によるもので、2020年の時点で米国で生産される天然ガスの約8割はシェールガスによるものです。シェールガスは、地下2000m付近でガス成分が含まれている岩石層(シェール層)を探し、そこに砂と化学物質を混ぜた水圧をかけて周囲の岩を破砕してガスを採取する水圧破砕法が実用化され、天然ガスの生産量を飛躍的に伸ばすことができるようになったものです。


地球温暖化&CO2排出権&森林について

日本の平均気温は、100年(大正時代)で約1.3度上昇しています。大都市や西日本の上昇率が高く、温暖化により自然災害が多く発生する原因のひとつかもしれません。気象庁が行ったスーパーコンピューターによるシミュレーションでは、平均気温が1度上昇すると、日中の最高気温が35度を超す猛暑日の数は1.8倍に増え、異常気象による災害や感染症を引き起こす要因になるといわれています。このまま放置しておくと2100年までに世界全体では2.7度上昇し、平均海面水面が最大1.1メートル上昇、沿岸部の湿地が2~9割消失、浸水被害が現在の100~1000倍になり、日本を含めた島国は国土の何割かが沈むと報じられています。地球温暖化の進行を抑えるために国連気候変動枠組条約の加盟国(197ヶ国)を集めた国際会議「COP26」(2021年10月開催)で世界の平均気温を産業革命前(1900年頃)との比較で、1.5度以内に抑えることを努力目標として掲げ、各国温暖化対策への取り組みを強化することとしました。

★温暖化が進行した2100年の予測★
・世界の平均海面水位が1.1m上昇
・沿岸部の湿地帯は海面上昇で2~9割消失
・沿岸部浸水被害は現在の100~1000倍
・海面上昇により漁獲量は最大24%下落
・海洋熱波が約50倍の頻度で発生
・欧州やアジアなど小規模氷河の8割以上が溶ける
・グリーンランドや南極の氷床の融解の加速
・永久凍土の融解により小さな湖が増える

IPCC(全国地球温暖化防止活動推進センター)特別報告書より一部抜粋
環境省 「2100年 未来の天気予報」
http://www.env.go.jp/press/107008.html

温暖化ガス排出は排出先のペナルティーとして罰金制度(金融商品化)としても扱われ、欧州が先導して排出量取引を活発化させています。CO2換算1トンあたりの取引単価は、2016年に1tあたり850円位だったものが2021年には1万円にまで高騰しています。テスラも赤字の際にCO2排出権で利益をプラスにもって行き、それを元手に会社を大きくしていったことを考えるとCO2を使ったひとつのビジネスモデル形成も考えているところもあります。

 

日本でも温暖化ガス排出の売買は、これまで価値の算定が難しかった森林などの自然資源をCO2吸収量として価格評価する仕組みもできあがりつつあります。例えば、大手ハウスメーカーの住友林業は、国内最大規模となる約5万ヘクタールの山林を保有しこれは日本国土の900分の1を占める広さになります。同社の森林資源は、環境省が推進するオフセット・クレジット(J-VER)制度における「持続可能な森林経営促進型プロジェクト」において、自社の社有林が登録第1号となり(2009年)、その後もCO2吸収クレジットの対象となる認証を順次取得しています。宮崎県東臼杵郡にある約550ヘクタールの森林は、年間で約4500トンCo2(ton-CO2)のクレジット発行量があると算定され、2021年末時点で、欧州のCO2排出量のクレジット価格で換算すると年間約4,500万円のCO2の価値になります。

世界全体で排出されるCO2量は年間で約335億トンと算定されており、CO2排出量取引価格(1万円/t)で算定すると、335兆円となります。この制度が世界で標準化されると、今後はCO2を排出したペナルティーとして多額の費用を負担しなくてはならなくなります。欧州では既に輸入品に新たな関税をかける様な仕組みをつくりつつあります。

CO2排出量取引については、バブル的な要素もありますが、金融を仕切っている欧米が、有無も言わせない様な枠組みをつくっていく懸念も多分にあり、その動きをよくウオッチしておく必要があると思います。

日本は地震、火山噴火、台風などの自然災害、平地も少なく地形的に自然エネルギー等の利用は欧米に比べかなり不利な状況にあります。また資源や食糧自給率が低く、輸出入も船や飛行機など多くの燃料を使う輸送手段に頼り、IT分野でも加工部品などが中心で国内で自活することが出来ていないため、脱炭素化を進めていく上では、他の国に比べ、難しいチャレンジをしていかなけばならず理想と現実に真摯に向き合い、取捨選択を早めに行い、より一層工夫していくことが重要ですね。

次のコラムでも脱炭素化について引き続き気になる点等を述べたいと考えています。

★コラム★
●銅は第二の石油へ!「銅の安定確保が脱炭素社会のカギを握る!!」
https://me-grande.com/copper
●”不労長寿(FIRE)” 北海道は日本の食糧需給率UPの重要拠点!? 北海道名産 ”不老長寿の果実”「ハスカップ」は 、もしかしたら”不労長寿(FIRE)” の入口かも!?
https://me-grande.com/archives/2032
●ロシアへエネルギー資源依存度が高い欧州が脱炭素の遅い国に「国境炭素税」をかけてくる可能性大!日本が負担増になるかも!!
https://me-grande.com/archives/1702
●ロシア産石炭の輸入を段階的に削減!北海道の石炭卸業者から聞いた ”石炭は国によって成分が大きく異なるので代替え先が見つかれば良い訳ではない!” 使う方では大きな惑いも!!
https://me-grande.com/archives/2137

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