脱炭素化やDX化、都市化が進むことによって、急速な需要に対応する為に資源の輸出依存率が高い日本としては、リサイクルでリーダーシップをとり、いまのうちに備蓄量を増やして、世界紛争、自然災害、コロナなどの疫病など、今後いつ何が起るか判らない有事に備えておく必要があると思います。今回のコロナや世界紛争は、今まで当たり前だったものが、当たり前じゃなくなるリスクや、例えが適切でないかもしれませんが、昔からある日本のことわざ「風が吹けば桶屋が儲かる」といった我々が気がつかなかったモノの結びつきや関係性の重要さを改めて実感した次第です。
別のコラムで、身近にあり我々に馴染みのある銅の枯渇や価格高騰についてコメントしましたが、EV化・都市化が進むことで、レアメタルといわれる「コバルト、ニッケル、リチウム」についても銅以上に深刻な問題を抱えています。その中でもコバルトは、スマートフォン約5~10g、PC約100g、EVは格段に大きく約9kg。その他産業機器の特殊合金に多く使われています。採掘国もコンゴ1国で71%と異常に高く、埋蔵量も世界全体で約700万tと銅に比べて2桁少ないレアメタルです。スマートフォンで使うリチウム電池に使われているコバルトのひっ迫を懸念してApple社が、2018年2月にコンゴで直接資源確保に動いたほどです。
今後、脱炭素化及び経済発展と共に、銅(Cu)などのベースメタル、コバルト(CO)、ニッケル(NI)、リチウム(Li)などのレアメタル、モータなど高性能磁石をつくるために使われるネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ディスプロジウム(Dy)、テルビウム(Tb)などのレアアースなどの安定調達が重要になってきます。
但し、銅やレアメタル、レアアースの採掘・精製に伴う環境汚染は激しく、鉱石の精製プロセスで発生する廃硫酸処理による水質・土壌汚染と、廃棄物の中に含まれる放射性物質トリウム(Th)、ウラン(U)による、放射能汚染が問題となっています。これらの環境問題を抑えつつ、世界の需要増に応えていくかが大きな課題です。
■コバルトについて
国際エネルギー機関(IEA)の2021年7月の報告書によるとEVを含む電動自動車の普及台数は2020年度は約320万台となり、世界の自動車総販売台数の5%となりました。現在、世界で走行する普通自動車、トラック、バスを含む電気自動車(EV)の総数は、現在の1,100万台から2030年までに1.4億台(1年間平均1800万台)になり、各国政府が地球温暖化防止目標の達成に十分な台数の低炭素車の生産を促進することに合意すれば、全世界で2.3億台(1年間平均2400万台)に増えることになります。
2021年12月14日に、トヨタがEVの販売台数を引き上げ、2030年までに350万台にすると発表、テスラ社のイーロンマスクCEOも2030年には年間2000万台を販売する計画(2021年は93万台)を掲げその他VW、GM、BMWをはじめとする欧米の大手自動車メーカーや巨大市場の中国メーカもEVに舵を切りっていることを考えると、2030年の世界の自動車18億台のうち、1.4億台(8%)又は2.3億台(13%)になるという(IEA)の予測値も実現不可能ではないのかも知れません。
2019年を例にとるとEV約210万台に対し、EVに使われたコバルト総量は1.9万t。平均して1台当り約9kgのコバルトを使った計算となります。
コバルトは、蓄電地やガソリン車、電子・産業機器などの特殊合金などに使われるので、2030年までに使用されるコバルトの量は
①EV: 1800万台×9kg/台=16万t/年 又は 2400万台×9kg=22万t
16~22万t×9年=150~200万t
②蓄電地、電子・産業機器器:
20万t/年×9年=180万t
☆2030年までのコバルト使用量:約330万t~380万t
コバルトの世界全体の埋蔵量が約700万tしかないので、2030年以降EVや電子機器などの使用量が横ばいだったとしても、約20年以内(2040年まで)に埋蔵量を全て使い尽くしてしまう計算になります。
出典:JOGMEC、資源エネルギー庁 資源・燃料部
《参考》
●経済安全保障の観点で見たバブル期~現在までの貿易額推移と米国と中国依存率について
https://me-grande.com/archives/2935
●日本の輸入依存率(エネルギー等、衣、食、住)とサプライチェーンの確立について
https://me-grande.com/archives/2491