2022年3月27日放送
最近、石油やLNGなどの価格上昇により、電気代、ガス代などのライフラインや食料品の値上りのニュースを良く見かけます。これは様々な要因がありますが、基本的には日本は資源や食糧の自給率が低く、海外に依存している割合が大きいことから影響が多方面に及ぼすためです。従って、紛争などに対する安全保障だけでなく、消費者庁主導で、サプライチェーンの再建と工業製品や食糧など経済面での安全保障体制強化に対して議論されています。採れる資源は限られ、食糧自給率をあげるにしても人材、気候、競争力、土地、作付けなど直ぐにできる訳ではないので、「備蓄戦略の見直し」や「新たな調達先確保」など、次の技術や対策が立ち上がるまでのつなぎとして、国民生活や企業活動が安心して行えるような “既成概念にとらわれない先を見据えた動き“ が非常に重要だと思います。
同番組内で、中居正広さん、劇団ひとりさん、古市憲寿さん(社会学者)、北原里英さん(元AKB48,NGT48)が質問し、加谷珪一氏(経済評論家)、堤伸輔氏(フォーサイト元編集長)、柳沢秀夫氏(元NHK開設委員)、島本真衣アナ(テレビ朝日)が解説。
加谷氏によると、ウクライナ情勢前から新型コロナウイルスの経済再開や企業の前倒し発注で(需要が供給を上回り)値上り傾向であったが、そこにウクライナ情勢が起こり物価が更に上昇するという。ロシア侵攻の影響によるモノは主に小麦製品、海産物、光熱費。
●小麦
日本は小麦をアメリカ(49.8%)、カナダ(33.4%)、オーストラリア(16.8%)の3カ国からほぼ100%を輸入しているが、世界の小麦の輸出量はロシアとウクライナで世界の3分の1を占め、ロシアとウクライナの小麦輸出の減少で世界的に争奪戦になり価格がつられて上がっているという。直近でパンは10~15%値上り見込み。
*出典:小麦は約9割を外国から輸入。国内産小麦では量や質が満たせない需要分を政府が国家貿易により外国産小麦を計画的に輸入。5年間の平均流通量(2016~2020年)
国内小麦 82万トン、輸入小麦 488万トン (アメリカ(49.8%)、カナダ(33.4%)、オーストラリア(16.8%)この3ヶ国でほぼ100%)
●海産物
海産物は、サーモンはノルウェー産のメインであるが価格上昇している。ロシア上空を飛行できず世界的な燃料高に加え、迂回ルートを通ることで燃料使用量が増えた。その他ロシアは海産物を沢山作っており明太子やウニも値上がりする。
●光熱費
光熱費はロシアからの原油や天然ガスへの供給が滞ることの懸念で価格があがるという。ロシアは原油生産高が世界3位。石油や天然ガスの供給が滞ると、平均4人家族で1年間の光熱費が約4万円増加するという。高騰を抑えるために林外務大臣が、日本が輸入する原油の3割を占めるアラブ首長国連邦(UAE)を訪れて増産や安定供給を要請した。
●イタリアの状況(ヨーロッパの状況)
特に物価が高騰が激しいのがヨーロッパ。イタリアでは既に、小麦やエネルギーなどの大幅な物価上昇がはじまっているという。イタリアは小麦を原料としたパスタなどが主食だが、小麦はウクライナ、ロシアなどから輸入しているため影響が直結。今ある備蓄が不足すると、どんどん値上がりすることが予測されているという。ガソリン価格も急上昇し、3月に1L当り67円も上がり、現在 309円/L。イタリア政府が緊急対応で30日間0.25€(約34円)価格を引き下げると決めたという。また、イタリアでは新型コロナの状況も一時は良くなったが、3/24時点で1日あたり8万2千人と少しずつ悪化しているという。
●4月以降の値上げ商品
4月以降、味噌・サラダ油・即席麺、レトルトカレー、チョコ、ケチャップなどが値上げされる。大豆・小麦の値上がりなどが理由。また、原油などの値上りにより、クリーニング、ティッシュ、本、卵、お酒、コーヒーなどなども値上げが予定されている。商品によって異なるが、石油由来から作られているモノや輸送費UPなどの影響もある。トマト、ナス、ピーマンなどの夏野菜、イチゴ、ぶどうなどはビニールハウスの燃料費高騰により値上り予定。
牛肉、豚肉、鶏肉などもとうもろこしなどの家畜飼料の値上りや経済活動の再開など世界での需要増により値上り。牛肉1kgでとうもろこしなどの飼料が10倍の10kg+水が必要といわれている。牛丼チェーン3社は去年相次いで値上げしている。
企業は、「量を減らす」「質を落とす」「名前を変える」などマイナーチェンジをして、ステルス的な方法で一見、値上りを抑えているかの様な努力をしているが、企業で値上げ分を吸収できずもう限界にきており、値上げに踏み切る会社が増えてきている。
日本の食品ロスは、年間570万t(日本人1人当たり毎日お茶碗1杯分の食品を捨てている計算)あり、これは世界食糧援助量(2020年で年間420万t)の1.4倍(消費者庁)になり、食品ロスを工夫することでもう少しモノの量が浮き、解決に向けて企業による努力が行われているが、消費者側の意識改革も重要になるとしている。
加谷氏によると現在値上げが行われているが、タイムラグがあり、原料高騰、ウクライナ問題、日米金利差による円安が拍車をかけ、今後値上りを抑えるのは難しく、値上りが本格化するのは、2022年の秋ごろになるとコメントしている。
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