日本と西欧は、エネルギー・資源・穀物の輸入割合が非常に高い国々です。経済封鎖があるとエネルギーと原材料、資源がない産業が廃れ、輸入に依存した体制の失策が一挙に表面化してきます。
食料でいえば、穀物と大豆は、人間が食べるパン、うどん、ラーメン、納豆、醤油、油あげ、豆腐だけでなく、家畜の飼料でもあります。鶏肉1kgで4Kg、豚肉1kgで10kg、牛肉は14kgの穀物(小麦・トウモロコシ)が必要です。和食の原材料はほぼ輸入製品で、魚の38%が輸入、蕎麦の実でさえも豪州からの輸入がメインでです。
中国は、低・中価格帯の商品の世界1位の輸出大国で中国の商品がないと、欧米や日本の日用品は、高騰します。今回のロシアへの制裁でロシアの天然ガスの依存率が約40%と高い欧州がまず最初にエネルギーコストの強い影響を受けます。それにより、欧州での脱炭素化が世界でいち早く進むとの考えもあります。
その価格調整弁として、欧州は「国境炭素税」の形で調整してくる可能性があります。炭素税の導入状況は、国によって差が大きく、スウェーデンはCO2排出1トン当たり約1万4000円代、フランスは約5500円と幅がありますが、日本ではまだ290円弱となっています。(米国や中国などは導入していない) ガス輸入が多く、EU全体でもロシアからの天然ガスに4割近く依存し、ロシアとの貿易・投資もウエイトを占めています。欧州では炭素税の不公平を調整するうえでも、脱炭素対応の遅れた国からの輸入品に、国境炭素税をかける構想が進んでいます。今回のウクライナ危機で欧州の脱炭素対応はさらに進むと見られ、すでに日本やアジア諸国との炭素税負担格差が大きいだけに、日本も早急に対応を進めないと、貿易時に国境炭素税の形でコスト負担を余儀なくされます。CO2削減のための対策を急ぐ必要があります。
その為にもまずは、資源、素材、部品不足解消のために、調達先の多様化、戦略的な備蓄などの動きを加速化することが重要だと思います。
国境炭素税が生まれた経緯には、EU域内の気候変動対策の水準が他の国と比べて高く、炭素税を多く負担しているEU域内の企業にとって、域外の企業と競う際に不公平さが生まれることから考案されたものです。現状の具体的な措置は
(1)EU域外からの輸入業者に対して、CO2排出量に応じた負担を求める
(2)EU域内からの輸出品に対し負担分の還付を行う
ことなどが軸。現時点の課税対象は、CO2排出量の多い「鉄鋼」「セメント」「肥料」「アルミニウム」「電力」の5品目で、2023~2025年までは、排出量を報告するだけで、国境炭素税の負担はないが、今後、その不公平感から、課税対象の拡大、早期施行、輸出業者への課税強化などの網をかけてくる可能性が高くなる懸念があります。
出典:諸外国における炭素税等の導入状況2018年7月 環境省